自動車業界
『自動車業界』徹底分析!
自動車業界の位置づけ
名目GDPは13.9兆円であり、製造業の中では機械産業やエレクトロニクス産業と近い水準
自動車・輸送用機器産業の名目GDPは13.9兆円で、全産業に占める割合は2.5%です。製造業の中では、機械産業やエレクトロニクス産業と近い規模である。一方、就業者数は237万人で全体に占める割合は3.5%となっており、近年減少傾向ではあるものの機械、エレクトロニクスよりも就業者数は多いです。背景には、自動車・輸送用機器業界が典型的な組立型製造業であり、部品や付随品の製造分野でも多くの人材を必要としていることがあげられています。自動車産業では国内人口の減少にともない生産拠点の海外移転が進んでおり、電気自動車や自動運転などの技術動向にも注視する必要がある。
自動車・輸送用機器業界は自動車業界や航空業界に代表されるようにファイナルアセンブラを頂点としたピラミッド構造となっている。
自動車・輸送用機器業界は部品会社との関係性の強い業界が多いという特徴があります。特に、自動車業界や航空。航空部品業界はファイナルアセンブラを頂点としたピラミッド構造となっており、部品会社に系列の会社を持つ企業が多くなっています。船舶業界や航空業界では顧客のニーズに応じて輸送用機器を製造する為、顧客と直接的に取引をおこなう一方、自動車業界では基本的にはディーラーと呼ばれる自動車販売事業者が顧客との取引をおこなっています。
自動車関連業種である自動車部品やディーラーは大手自動車メーカーの系列が多い
自動車関連の事業者には大手自動車メーカー系列の事業者が多くなっています。例えば、自動車部品のデンソーやアイシン精機などはトヨタ系列であり、テイ・エステックやケーヒンはホンダ系列の事業者です。
自動車部品
・デンソー
・アイシン
・豊田自動織機
・トヨタ紡織
・テイ・エステック
・ケーヒン 等
船舶・船舶部品
・今治造船
・ジャパンマリンユナイテッド
・ツネイシHD
・大島造船所
・新来島どっく 等
航空・航空部品
・三菱重工業
・川崎重工業
・富士重工業
・新明和工業
・IHI 等
自動車
・トヨタ自動車
・本田技研工業
・日産自動車
・マツダ
・SUBARU 等
運搬機械
・豊田自動織機
・三菱ロジスネクスト
・小松製作所
・住友ナコフォークリフト 等
市場トレンド
コロナ禍で大幅な減産を強いられ、加えて半導体不足により生産台数が伸び悩む
日本自動車工業会によると、国内の乗用車の生産台数はコロナ禍前は70万台から90万台の間で推移していましたが、2020年は25万台から70万台に大幅に減少しました。2022年は社会経済活動の正常化と共に需要は高まったが、世界的な半導体不足4で生産台数は伸び悩み35万台から64万台にとどまった。2023年は、半導体や関連部品の調達難は若干解消され、生産台数は52万台から74万台の間まで回復しました。
Connected(コネクテッド)の動向
Connected、通信機能を利用して、様々な価値を創造することを意味しています。リアルタイムでのデータのやり取りが必要な自動運転に欠かせない技術としても注目されています。
活用例としては、交通事故が発生した際に関係機関に自動で通報する機能、カーナビの為の地図データの取得やリアルタイムでの位置情報の送受信、音楽などのエンターテイメントの利用などがあります。国内外の企業が車をよりよくつなごうと取り組んでおり、通信機器メーカーや半導体メーカーとの協業の動きも活発化しており、今後、次々と新しいサービスが登場することが予想されています。
Autonomous(自動運転)の動向
自動運転は、6つにレベル分けされています。
・自動運転レベル0:自動運転なし
・自動運転レベル1:衝突被害軽減装置やACCなどの運転支援
・自動運転レベル2:衝突被害軽減装置やACCなどの運転支援システムの組み合わせが可能
・自動運転レベル3:条件付きの自動運転。ドライバーの対応が必要となる場面がある
・自動運転レベル4:特定条件下での完全自動運転
・自動運転レベル5:完全自動運転
現在国内では、レベル3の車が発売されています。現在は世界各国でレベル4の実証実験が行われており、東京五輪の選手村でもレベル4相当の小型電位バスの運行が行われました。
Shared(シェアリング)の動向
Sharedはこれまでの車を個人で所有する時代から、複数人やコミュニティでシェアする時代になる事を示す言葉です。
日本では、交通弱者救済のため過疎地で例外的に認められるに留まっているためカーシェアリングが主流ですが、海外ではライドシェアリングも広がっています。間接的な効果としては、車を所有する世帯が減ることにより、CO2の排出量削減や排気ガスにより大気汚染などの環境問題へも良い影響を与えることが期待されています。
Electric(電気自動車)の動向
Electricは特に欧州で各国衙続々と化石燃料車の製造。販売を禁止し、電気自動車やハイブリッド車への切り替えへと舵を切っています。高まる環境問題への懸念に比例し、CO2の削減が実現できる電気自動車への関心はその対策の要として、世界中でこれからも高まり続けるでしょう。
日本の自動車業界への取り組み
国は自動車業界を「日本の根幹産業」と位置づけ、引き続き発展のためのサポートを行う姿勢です。
現在は構造変革のチャンスとし、「社会制度の変革・イノベーションを促す仕組みを政府が整備する案が出ています。具体的には、自動車産業からモビリティ産業への変革のサポート、脱炭素化・電動化への対応などです。
構造改革においてはCASE時代への適応に向けた支援の検討・取り組みに前向きな姿勢がうかがえます。
技術の発展はもちろん、EV車やCASEのSのように環境への配慮・SDGsへの取り組みが今後益々注目されることとなりそうです。
日本の自動車業界の今後の課題
将来が不明瞭で不安のある中、100年に一度と言われる変革期が訪れています。この時代を生き残るには、自動車業界のトレンドに対して、常に前向きな姿勢で積極的に取り組むことが大切です。
現在、日本の自動車業界が抱えている課題には次のようなものがあります。
【自動車業界の今後の課題】
AIやIT技術を駆使した自動運転の開発
人手不足の解消と業務の効率化
これらの課題を乗り越えるためには、新しい技術や考え方を積極的に取り入れ、EV車種の拡充など、変化やニーズに対応し続ける必要があるでしょう。
自動車業界は今、世界的に新たな価値創造のための変革の時代に入っています。これまでの「乗り物」を作る産業から「モビリティサービス」への変革です。
大きな変化ですが、時代にニーズに合った変化であり、国も「日本の重要な産業」として支えていく姿勢を見せています。
自動車業界が今後どのように変化・成長していくのか、日本をはじめ各国の取り組みから目を離せません。