派遣社員にやらせてはいけない業務とは?
◆派遣社員にやらせてはいけない業務とは?
さまざまな働き方が普及し、業務形態が多様性しているなか、人材派遣サービスの市場も拡大しています。即戦力の人材として期待できる派遣社員ですが、人材派遣サービスを活用する際には業務範囲の定めなど、直接雇用とは異なるルールに注意する必要があります。
本記事では、派遣社員および人材派遣サービスの概要から、具体的な禁止業務や契約規程まで、契約違反や法令違反などのトラブルを避けるために知っておきたいポイントを解説します。
◆派遣社員に依頼できる業務範囲には決まりがある
労働者派遣法によって、労働者派遣が禁止されている業務があります。
派遣を依頼する際は、下記のような業務内容に該当していないかをまずは確認いただくことが大切です。
労働派遣法で禁止されている業務
・港湾運送業務
例:湾岸から船舶へ貨物を積み込む、または船舶から湾がんへ貨物を降ろす
・建設業務
例:ビル火・家屋などの建築現場で資材の運搬や組み立てなどをおこなう
・警備業務
例:会場や店舗の出入り口で手荷物検査を実施する
・医療関係業務
例:医師、薬剤師、助産師、歯科衛生士、看護師
・仕業
例:弁護士、司法書士、税理士、公認会計士
・契約書に記載していない業務
派遣元会社と派遣先会社との間で交わされる派遣契約書の中には、労働者派遣法に従い、「派遣社員が担当する業務内容」を盛り込む必要があります。
つまり、派遣社員にはこの契約書の中で定められている業務以外の内容に従事させてはいけません。なお、派遣社員の業務内容が契約書を遵守しているかは、派遣元会社・派遣先会社がともに見守る必要があることも覚えておきましょう。
・二重派遣
派遣元の人材派遣会社と派遣先企業は派遣契約を結んでいます。締結した契約で定めている業務については、「派遣先企業」の指揮命令のもとで派遣社員は派遣先にて業務に従事します。派遣先企業が、また別の会社に派遣スタッフを派遣し、そこで指揮命令を行うことは「二重派遣」となり、派遣契約を結んでいない会社が派遣社員に業務を指示しているという形は法律違反となります。
・偽装請負
指揮命令権のない業務請負という契約を交わしておきながらも、発注者が受注者を指揮命令下においた上で働かせている行為で、一時期横行したことで社会問題にも発展した経緯があります。この偽装請負も労働者派遣法により禁止されている行為の為、派遣先は注意しなければなりません。
・日雇い派遣
日雇い派遣は、原則として禁止となっています。日雇い派遣とは、30日以内に終わる仕事を任せることで、派遣労働者の労働環境を守るため、任せてはいけないという決まりがあります。
ただし、60歳以上の方、雇用保険の適用を受けない学生、世帯年収が500万円以上の方など一定の条件を満たす場合は、日雇い派遣が可能です。
◆禁止業務に従事させた場合の罰則
派遣禁止業務で人材を派遣した場合は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰則」が課せられます。また、就業条件を派遣労働者に伝えず3年以上同じ派遣先に継続して派遣させた場合や、虚偽報告を行った場合には30万円以下の罰則が科せられるため、注意が必要です。
◆業務以外で気を付けるべきこと
業務以外にも、派遣社員に働いてもらううえで気を付けたいポイントを紹介します。
以下に該当する場合は法令違反の可能性があるため、必ず是正してください。
①派遣前の面接
派遣を予定している社員との事前面接は、法律で禁止されています。そもそも労働者派遣とは、特定の個人を派遣するものではありません。契約内容に基づく業務を提供するものであるために、個人面接は禁止されています。
②派遣の3年ルール
派遣社員は、同一の事業所の同一部署で3年以上働くことができません。3年を超えて働きたい場合、雇用形態を切り替える必要があります。
※無期雇用派遣契約をしている派遣社員や60歳以上の派遣社員は例外です。
◆派遣社員に活躍してもらうために企業ができる事
・派遣社員に活躍してもらうためには、職場の環境を整えることが重要です。よりうまく派遣社員を活用できれば、業務の効率化にもつながるでしょう。派遣社員を活用する為には、企業にどのようなことができるのかわかりやすくご紹介します。
・正規雇用社員と同等に接する
一つ目のポイントは、正社員と同様に扱うことです。「正社員だから」・「派遣社員だから」といった区別をすることなく、どちらも同じ職場で働く仲間として同じように接することが大切です。せっかく派遣社員を雇ったにもかかわらず、業務に馴染めないケースもあります。そうなってしまうと、業務効率が下がってしまう為、初日に社員全員に紹介し、できる限り馴染めるようにする、同じように福利厚生施設を利用する、きちんと個人名を呼ぶなどして派遣された初めからきちんと仲間であるということを意識させることが大切です。
・派遣社員への教育と社内ルール周知の仕組みづくり
二つ目のポイントは、派遣社員への教育と社内ルール周知の仕組みづくりをすることです。 派遣社員は社内ルールを全く知らない状態で派遣されてきます。就業期間は、契約によってまちまちですが長い人短い人も社内ルールや業務に必要な手順、ノウハウについての教育はしっかりと行うようにしましょう。社内ルールなどをわかりやすく伝えることが、今後の仕事の出来を左右することもあります。作業手順書やマニュアルを作成しておくことで教育にかかるコストを削減できることもありますので教育体制を整えることが重要です。
・業務範囲を明確に定める
三つ目のポイントは、業務範囲を明確に定めることです。先述のように、派遣社員には契約内容以外の業務をさせることはできません。そのため、契約前にあらかじめどのような業務を任せることになるのかを明確化しておきましょう。さらに、派遣会社と情報を共有することで、「派遣契約内容と異なる内容を任せている」「契約外労働をさせている」などは情報を共有し合うことで発覚します。常に、派遣法を犯していないか、人材派遣会社と派遣先会社で確認することが重要です。
◆まとめ
派遣社員にさせてはいけない業務は労働者派遣法で定められている内容だけではありません。業務範囲外の内容を任せてしまわないように、契約内容を締結する際の確認や定期的な見直しを図る事でも未然に防ぐことができます。
少しでも困ったことや気になる事はすぐに人材派遣会社へ相談いただくことをおすすめします。